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泉美木蘭
2022.11.19 15:20

世間でのマスクの掟

マスクをしたまま飲み食いする「マスク会食」なんか、
今まじめに実践している人は少数派で、
若者から年配者まで、飲食店のなかではマスクを外して
わいわいやっている。
店に入ると、そういう光景が広がっているから、
新しく入って来た人は、安心してそこではマスクを外す。
すっかり楽しい時間を過ごしたら、コートを着て、
帽子をかぶり、マスクをして、外の世界へと出ていく。

店から一歩外の世界へ出ると、
そこではマスクをして歩いている人のほうが圧倒的に多い。

だから、「マスクをしておいたほうがいい」と感じる。
さっきまで、大勢がわいわい飲み食いしている室内にいて、
マスクなんか外したままでも平気だったのに?

そんなこと関係ない!
自分の考えや体感よりも、人の目のほうが大事!
その場、その時、自分が属する空間、世間の目のほうに
自分を寄りかからせておかなきゃ、不安だろ!
個人の考え? 自分で調べた科学的事実?
そんなものを参照してしまったら、世間からはずれて
指をさされてしまうだろ!

帰りの地下鉄のなかでスマホを開き、
スポーツニュースの映像を見たら、海外のスタジアムで
大歓声をあげている外国人たちは、誰もマスクをしていない。
アメリカの中間選挙の演説写真を見ても、
シュプレヒコールをあげる群衆のなかに、マスクはちらほら
としか見かけない。
ロンドン、パリ、ニューヨーク、海外の街頭の様子も見れる
けれど、どこもマスクの人がいない。

そんなこと知ってる!
知ってるよ!
知ってるけど、いま自分がいる、地下鉄の車両の中じゃ、
全員がマスクなんだよ!!

店ではノーマスクで飛沫をとばしながらべらべらしゃべっていて、
なんで黙って座ってスマホを見てるだけの地下鉄でマスクなのかって?

だってこんなところでマスクを外していたら、
みんなの視線が刺さって
怖すぎるじゃないか!

実際に誰からも見られなかったとしても、

どうしても、コソコソ見られているような気がしてきて、
怖くて怖くて、そこにいるのが居たたまれなくなってしまうんだよ!

だって、いつも自分がそうやって、
大勢と違うことをしてる人を
コソコソ見ちゃってるから!!

地下鉄の車両では、
その車両内の多数派が形成している世間を

なにより慮らなければ日本人ではないんだ!!!

そんな感じやろ?
いま楽しく外出してるのに、マスクをしてる日本人って。
だって本気で怖がってる人は、出てこないんですよ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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